2020/01/17 21:19




皆さん初めましてペコリ。ぼくの名前はルチアっていう女の子。
野良猫の帽子のメンバーでお使いや売り子、お店の看板とか絵をかきかきしてるよ!
絵は店主でもあるディーンが選んでくれたもので【原画】っていうのだけれども、このぼくが担当してるんだぁ✨

普段はぴょんぴょんしてるから皆からは小動物とか言われちゃうけど💦
ディーンと一緒で魔力の消費によって背格好が変わるんだぁ。普段は小さいけど、膨大な魔力を使うときは体が急成長するんだよ✨
覚えといてね!ぼくが初めて登場する物語の一説だよ -ここは大商業都市から数百離れたとある森の中





『…がびーん!…(泣)』
彼女は嘆き苦しんでいた。
この背丈がドワーフほどで、ぴょんぴょんと跳ねながら何やら困り果てている可愛らしい少女こそが『ルチア』。
そう、たったいま森の中で迷ってしまったのだ。 

『マザーから大事な大事なお使いを頼まれたのに💦このままじゃ、夜になっちゃうよぉ…』
彼女の手にはアシアカと言われるユニコーン種の動物より創られたカゴに、
これまた珍しい【鉱石スイーツ】をたんまり入れた物をどうやら運んでいるようだった。
トボトボ歩く行き先はいつまでも木々に囲まれていて一向に出る気配がないのだ。
日が落ち始め辺りが少し薄赤くなってきた頃、行き先の茂みの中から何やら大きな物音が聞こえてくる。


ガサッガサッ!…ガサガサッ!!? 

『…ひっ!?』
耳で聞き取れるほどのその大きさと、何より奇妙な角が見え隠れしていた。

『…いやだよぉ…ドキドキする…』

その場からゆっくりと後退りながらも、ルチアはおもむろに背中に担いでいた大きなキャンバスにパレットをとり、
魔力を込めた羽ペンで絵を描き始めていた

『…ぼくだってね、やればできるんだから!』

彼女は、元々魔族であり創造魔法の絵画魔法を得意とする魔導師でもあった。キャンバスの中に描いたものに命を吹き込み動かしたり、使ったりできる。

 『グルルルルッ…!』
腹を空かした獣のように、先ほどの生き物が目の前に姿を現した。
それはまさにそう。悪魔の角が生え、羽折れの翼、そして三つ首の獣…間違いない!古来種のケルベロスだ!
大きさも仏国であるゾウの3体分はあった。


再び、二度、三度雄叫びをあげ大地は揺れ、空が割れ始めた
あまりの凄さに慌ててキャンバスを落としてしまい、その場で崩れ身動きがとれなくなってしまっていた

『…!!』
やられてしまう!…そう覚悟したルチアだったが、手の震えと戦いながら再び絵を描き始める

その距離にしてわずか数メートル。目と鼻の先であった。
『…いい加減にしろぉ!…これでもくらえ!…絵画魔法!八頭賢(ヤスサカ)の檻!!』

途端にキャンバスが光輝き、瞬く間にケルベロスの巨体を遥かに越えるさらに巨大な檻が降り注いだ。
身動きが取れなくなった獣はまるで飼い猫の様に静まり返っていた 

『ふ~…ぼくもぅへろへろだぁ~…(泣)』
どうやらその場は収まったのだ。

辺りはすっかり暗がりを見せ、抜け出しの森へと姿を変えていた。これでやっと帰れる。
ケルベロスの強大な魔力が迷いの森を作り出していたのだ。迷惑な話であったが、不思議と恐怖感がなく何か達成感に似たものを感じていた。
それにしても可笑しな話である。絶滅したはずの古来種がなぜこのような場所にいるのか…本来存在しないはずなのに何故?
謎が深まるばかりでやはり、心が落ち着かないままその場をあとにしたのだった。



始まりの書『ルチアの冒険』より
ルチアの登場とその旅の記憶の一説である




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